クラウド会計ソフトの功罪

マネーフォワードやfreeeといった非常に便利なクラウド会計ソフト。

最近ではデスクトップ型で有名な弥生会計も新しいクラウド会計ソフト(弥生会計Next)を発表しており、会計ソフトはクラウドが当たり前の時代になってきました。

私も独立当初から弥生会計、マネーフォワード、freeeの3つを使って自分の事業の帳簿付けを行ってきました。(freeeは途中でやめましたが…)

どれも事業用の銀行口座やクレジットカードと連携でき、自動で取引内容が飛んでくるので、紙資料を見ながら会計ソフトに手入力が当たり前だった少し前に比べると非常に便利です。

目次

「誰でも簡単に経理できる」という甘い誘惑

しかし「クラウド会計ソフトを使えば簿記の知識が無くても誰でも簡単に経理ができる」という甘い言葉をそのまま鵜呑みにしてはいけません。

残念ながら簿記や会計に疎い人がクラウド会計ソフトに課金するだけでは正しい経理を行うことはできません。(できた気になっているだけで、グチャグチャの状態になっているケースがほとんどです)

「クラウド会計ソフトは連携さえすれば自動で経理してくれるから、間違っているわけないでしょ?」と思う方もいるかもしれません。

確かに連携した銀行口座やクレカの取引内容は自動で飛んでくるので残高や金額が間違っているケースは少ないでしょう。

しかし明細がそのまま飛んでくるだけであり、一つ一つの取引内容(事業用なのかプライベート用なのか)や消費税(税率や区分)が正しいかどうか等はまだ人の目が必要となります。

そもそも最初の設定(事業用口座やクレカの連携、期首残高の設定、補助科目や取引先の設定、消費税の設定など)で躓き、ここで会計ソフトを投げ出す人も多いです。

さらに自動連携だけではどうしても表現できない取引というのも多々あります。

人の手を一切介入しないで完璧な帳簿を作成することはまだ出来ないのです。

それでも以下の条件を満たすのであれば、簿記の知識や会計業務の経験が無くてもクラウド会計ソフトの安いプランである程度正確な経理ができるのではないかと思います。

  1. 売上先が少ない
  2. 外注や仕入が少ない
  3. 売掛金入金の際に何も控除されない
  4. 事業用の固定資産が少ない(車一台くらいの規模感)
  5. 立替経費が発生しない
  6. 従業員がいない(法人の場合は社長1人だけ)
  7. 経費は会計ソフトと連携できる事業用クレジットカード決済をメインにしている
  8. プライベートのクレカや交通系ICカードは事業用として一切使用していない
  9. 消費税の納税義務がない(もしくは簡易課税を選択している)

もう少し分かりやすく具体的に紹介してみます。

例えば「原価が発生しない経営コンサルを行っている一人社長の会社」で、以下の条件だとします。

  • 売上先は毎月特定の2~3社のみ
  • 請求月の翌月に請求額通りの入金がある(何も控除されずに入金される)
  • 経費は可能な限り法人名義のクレジットカードで決済している
  • 電車やバス等の交通費は事業用のモバイルsuica等を使用(プライベートでは一切使用していない)
  • 現金や電子マネー(社長ポケットマネー)決済の領収書は月5枚以内(←法人クレカが使えない経費)
  • 全部含めて月の仕訳数が40以内
  • 消費税免税事業者もしくは簡易課税を選択している

これくらいの規模感や難易度であれば、法人口座・法人クレカ・モバイルsuicaを会計ソフトと連携してほぼ終わりです。

毎月行う作業は、売上の請求書作成とご自身の給与計算ぐらいでしょうか。

それぞれ、会計ソフトと連携しているものを使えば、請求書と給与明細を作成すると自動で仕訳を会計ソフトに飛ばしてくれます。

これなら簿記の知識や会計業務の経験がない方でも、クラウド会計ソフトの比較的安いプランで手入力の調整作業ほぼ無しでそれなりに対応できるでしょう。

それでも法人の場合は月3,000円くらいかかりますが…。(クラウド会計ソフトは最近ガンガン値上げしています)

弥生会計、マネーフォワード、freeeのどれがいい?

会計ソフトはたくさんありますが、選ぶとしたらやはり王道の、弥生会計、マネーフォワード、freeeの三択でしょうか。

それぞれ一長一短です。

私は弥生会計をメインに使っていますが、だからと言って弥生が誰に対しても最適とは思っていません。

freeeは色々なタイミングが悪かった(メインで使っているクレカの連携サービスがストップしたり…)ので使っていませんが、良いところもあります。

特にレシートの読み取り機能は最高です。

レシートをfreeeのスマホアプリでパシャするだけで精度の高い仕訳をすぐに作ってくれます。

マネーフォワードも同じくレシートの読み取り機能は最高です。

そして連携している銀行口座やクレジットカードの取引内容の反映が他のソフトと比べて早いのも大きな強みです。

ただしfreeeもマネーフォワードも、レシート内容をスマホで手入力するのは嫌がらせの如く超面倒に設定してあり、「スマホパシャに課金しろ」「課金しないとこんなに面倒だぞ、いいのか?」という圧を私は感じました(笑)。

しかも一番安いプランだとスマホパシャは枚数制限があったり、月5枚を超える場合は別料金みたいな仕様になっています。

レシートが月5枚以内で収まることなんて滅多に無いので、実質高めのプランを選ぶかスマホパシャに課金しないと地獄の手入力が待っているのです(笑)。

一方、弥生のレシート読み取りアプリは無料だけどクオリティが…。

まともに読み取りできないので、「手で入力した方が早くね?」というレベルです。

日付も金額も店名も全て間違っていることが多々あるので、「何かを試されているのかな?」と思うこともあります(笑)。

至るところで「スマート」という名称がついている連携関係の機能もマネーフォワードやfreeeに比べると手間がかかる為「どこがスマートなんすか?」というツッコミが飛んできそうです(笑)。

それでもやはり手入力の仕訳を必要とするケースでは弥生会計は断トツの使いやすさなので、簿記の知識や会計業務の経験がある方からは圧倒的な支持を得ているように感じます。

デスクトップ型特有のサクサク感はクラウド会計ソフトでは表現できない為、これに慣れているとクラウド会計ソフトのもっさり感はしんどいです。

マネーフォワードとfreeeはスマホだけでなくPCからの入力も弥生に比べるとアレなので、手入力の仕訳が多いとその時点でヤル気を失くします(笑)。

言い換えれば、手入力の仕訳をほとんど必要としない条件が揃っていれば、マネーフォワードかfreeeを選択するのが良いでしょう。(マネーフォワードとfreeeも全然違いますが…)

なお、弥生の個人専用のクラウド会計ソフト「やよいの青色申告オンライン」ですが、スマホで手入力する場合はシンプルな作りが功を奏して、マネーフォワードやfreeeに比べて圧倒的に使いやすいので、レシートのスマホパシャに拘りがなく、レシートや交通費をスマホで手入力するのに抵抗がないのであれば、個人事業(フリーランス)の方におススメです。

やよいの青色申告オンラインの法人バージョンの弥生会計オンラインは弥生会計Nextの登場でフェードアウトしたようです。

法人で弥生を使う場合はデスクトップ型の弥生会計かクラウド型の弥生会計Nextのどちらかですね。

なお、個人は弥生会計Nextが使えないので、クラウド型なら既存のやよいの青色申告オンラインですが、分かりにくいですね。

ここら辺、もう少し分かりやすいように整理して欲しいです。

自計化するにはある程度の覚悟が必要

各会計ソフトの特徴を簡単に説明しましたが、事業内容や取引内容は十人十色なので、周りがどうとか関係なく自分に最適な会計ソフトを選ぶことが一番重要です。

(事業内容が全く異なる)知り合いがfreee使ってるから自分もfreeeだ!」みたいな安易な考えで選ぶのはやめましょう、後悔します。

ここまで「弥生」VS「マネーフォワード&freee」みたいな感じで紹介してきましたが、マネーフォワードとfreeeも全然違うので、とりあえず各ソフトの無料期間を利用して並行して使ってみると、どれが自分に合っているのか少しずつ分かってくるかと思います。

今月は弥生、来月はマネーフォワードみたいな感じでやるよりは並行して使った方が、それぞれのソフトの差が分かりやすく、選定する時間も省けるので、並行して使うことをおススメします。

さらに無料期間中は必ず毎日各会計ソフトにログインし、各ソフトの特徴を掴むべく色々な機能を積極的に試してみましょう。

その中で操作性やデザイン性が受け付けられず、ソフトを開くこと自体が嫌になるものが出てきたら選択肢から外し、最後まで残ったものが一番最適なソフトになるのではないでしょうか。

一つも残らなかったら、自分自身で帳簿付けすることは諦めた方が良いかと…。

会計ソフトを使って自計化できるに越したことはありませんが、別に必須ではありません。

たまに「自計化している自分、イケてるぜ!」みたいな考えの人がいるようですが、間違った帳簿付けをした結果余計な税金を払っていたり、慣れない経理業務に時間を費やしすぎて本業に影響が出て売上が落ちていたら、本末転倒です。

その時点で全然イケてない…。

繰り返しになりますが、余程単純で簡単な取引しか出てこない場合を除き、「誰でもクラウド会計ソフトがあれば簡単に正しい経理ができる」という考えは持たない方が良いです。

会計や税はそんなに甘いものではないので、簿記の知識や会計業務の経験がない方が自分で経理を行うつもりなら、本業に充てるべき時間が減るだけでなく、慣れない経理業務のストレスに縛られることを覚悟の上、取り掛かってください。

クラウド会計ソフトに課金しても上手く使いこなせず、最終的には投げ出してしまう人をたくさん見てきましたので…。

各クラウド会計ソフトの料金

最後に各クラウド会計ソフトの料金を簡単な表にまとめましたので、選ぶ際の参考にしていただければと思います。

それぞれの無料期間をうまく活用して、自分に一番合った会計ソフトを見つけてください。

※2025年4月時点の情報です。

法人用

スクロールできます
名 称プラン名年額【税抜)備 考
弥生会計Nextエントリー34,800円3ヶ月無料
ベーシック50,400円
マネーフォワードひとり法人29,760円2025年6月新設
スモールビジネス35,760円2025年6月から値上げ
ビジネス59,760円
freeeひとり法人35,760円30日無料
スターター65,760円
スタンダード107,760円

個人用

スクロールできます
名 称プラン名年額(税抜)備 考
やよいの青色申告オンラインセルフ10,300円1年間無料
ベーシック17,250円
マネーフォワードパーソナルミニ10,800円1ヶ月無料
パーソナル15,360円
freeeスターター11,760円30日無料
スタンダード23,760円
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